本編は、大分県で新たに農業を始める「新規就農者」に向けた、経営の心得について、先輩就農者の声をもとに平成28年度に作成された冊子の内容を4回シリーズで掲載しています。
第3回目の今回は、先輩就農者が感じた栽培管理や経営管理の注意点についてです。
【シリーズ目次】
第1回
心得1 しっかりとした経営理念を持とう
心得2 将来のビジョンを描こう
第2回
心得3 営農にあたってのこころがまえ
心得4 がんばる原動力、モチベーションを保つためには
第3回
心得5 栽培管理の注意点
心得6 経営管理の注意点
第4回
心得7 地域とのつながりについて
心得8 トラブル、失敗事例
心得5 栽培管理の注意点
先輩就農者が就農してみて感じたことや注意すべき点などをまとめています。今後の営農の参考にしてください。
(基本は忠実に)
- 先生、師匠から習ったことをしっかりと忠実に実践すれば、ある程度の収量は獲れると感じた。
- 要(かなめ)となるポイントは絶対に外さないように強く意識してやった。
- 農業に限った話では無いですが、やはり基本は大切です。ただ、頭では分かっていても、就農したばかりで不慣れな中、手が回らなくて作業が遅れたとの声もよく聞きます。
(準備)
- 作業を効率的に行うためにも、事前の段取りや準備が大切だと痛感した。
- やはり行き当たりばったりではなく、計画性が大事です。
(栽培日誌・記録はしっかりと)
- 自分の教科書を作るつもりで、しっかりと記録を残している。翌年、翌々年に見返して参考となるように意識している。
- 農業分野は、言語化・マニュアル化が不十分と感じている。
農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)交付対象者は、年2回の就農状況報告が義務づけられていますが、作業記録の様式については1日あたり1~2行程度記入するだけの、非常に簡易なものとなっています。それでは簡易すぎるので、別に日誌をつけましょう。仕方なく作成するという考えではなく、自分の財産となりうる貴重なものと意識してください。
(研修と就農とのギャップ)
- 研修施設の圃場と就農した圃場とでは、水はけや土の状態が違っていて戸惑った。
- 研修で作業していた圃場面積が狭かったため、ゆっくり時間をかけて作業していたが、実際に就農してみたら作業スピードが違っていて大変だった。
→圃場の状態などは、実際に栽培してみないと分からない部分もあります。特に就農1年目や規模拡大等により新しい圃場で栽培する際は、特に注意しましょう。また、同一圃場でも場所によって土の状態、水はけが違う場合もありますし、以下の様な事例もあります。
- 周りの圃場の影響(周辺を水田に囲まれている)が想像していたより大きく現れ、栽培管理に戸惑っている。
( 反省点)
- 1年目は初年度で緊張感を持っていたが、2年目は慣れてきたせいか自分でも無意識のうちにどこかで気の緩みがあったかもしれない。改めて気を引き締めないといけないと感じた。
- 圃場にいる時間が少なかったかな・・・。いろいろと見落として、対応が後手に回ってしまった。
- 出だしでつまずいてしまって、今期作の最後まで尾を引いてしまった。
→圃場にいる時間が少ないと、生育異変や病害虫の発生初期を見逃してしまいます。こまめに圃場に顔を出し、よく観察しましょう。
現地を回っている普及指導員の感想としても、圃場であまり姿を見かけない農家は経営が思わしくない場合が多いようです。
心得6 経営管理の注意点
どうしても栽培管理の方に意識が偏りがちになりますが、経営管理も非常に重要です。
(留意点)
- 通帳は営農用と生活用と分けて管理しよう
→通帳を分けておいた方が、営農に係る経費の管理がしやすいです。また、定期的にATMなどで記帳して、取引の確認をおこなうとともに現金残高や預金残高も把握しておきましょう。
- 帳簿の記帳やレシートの整理は定期的に実施しよう
→農繁期で忙しくなかなか手が回らない場合もありますが、何ヶ月も溜め込むことのないように注意しましょう。月ごとに収入、支出を把握し、計画(目標)と対比させるなど、月次管理を意識しましょう。
- キャッシュフロー(現金の出入り)を意識しよう
→定期的な帳簿の整理等を実践し、現金の動きも意識しておきましょう。特に決まった時期にしか収入がない品目の場合は要注意です。
- 農業機械更新や資金償還を見すえて積み立てをしよう
→今後の大きな支出に備えて、計画的に準備しておきましょう。
とは言え、実態としては、不慣れな新規就農者にとって目の前の栽培管理で手がいっぱいで、日常の経営管理まで手が回らずおろそかになっている就農者が多いようです。
(現地でよく耳にする事例)
- 溜め込んでいたレシートを紛失してしまった。
- 確定申告が終わった後にレシートの束が出てきた。
- 気がつけば借入金の償還月に現金が無くて困った。
→「頭では分かっているけれど・・・」といった就農者もいれば、いわゆる「どんぶり勘定」であまり気にしていない就農者もいます。
しかし、経営者である以上、たとえ数字を扱うことが苦手であったとしても、お金と向き合うことは避けて通れません。自分から積極的に時間を確保して、日々の管理に努めましょう。
また、税理士などを活用している就農者もいます。経営のアドバイスをもらうのは良いですが、お金の管理が完全に人任せになってしまわないように注意してください。
(困ったことがあったらすぐに相談)
運転資金が足りない、借入金が償還できそうに無いなど、困ったことがあれば、金融機関や普及指導員に相談しましょう。関係機関が協力して一緒に解決策を検討します。悪い話ほど早めの相談をこころがけてください。
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